代表取締役社長 吉住正基
私が生まれた70年代の日本は高度成長の成熟期を迎えており、人口増に合わせて追い付けとばかりにモノの大量生産、大量消費の時代であった。この頃、企業の寿命は30年と言われたそうだ。今の日本は人口の減少局面を迎えると共に、人々の価値観が多様化し、企業寿命は7年とも5年とも言われる、とても厳しい時代である。
幾多の時代の荒波を乗り越え、吉住工務店が今日まで75年の社史を刻んで来られたのは、創業者である祖父やその思いを継いだ父の経営努力があったから。改めてその歩みに敬意を示したいと思う。また、それ以上に今お世話になっている方々、そして私はまだ一度もお会いしたことがないけれど、古くから吉住工務店を支えてくださっている地域のお客様、協力業者、社員、本当にたくさんの方に御尽力をいただいて、今を迎えることができていると回顧し、感謝の念に堪えることはない。これまで数々のご縁を紡いでくださった皆様の御恩に報いるために、この先も吉住工務店を永続させていくことと社会への貢献が、私たちの使命であると改めて感じている次第だ。
この10年を振り返っても、リーマンショックや東日本大震災など、世の中が一瞬でひっくり返るような大きな出来事が、私たちを取り巻く環境で次々と起こっている。創業100年を迎えるまでのこの先25年の間にも、私たちの想像をはるかに超えるような事件や事故、天変地異が起こることだろう。それらに万策で準備することはできないかもしれない。私たちに唯一できることがあるとすれば、それは成長し続けることだと思う。そして、成長はただ会社の永続のための手段でなく、私たちの存在意義なのだ。成長には苦労が伴う。仕事のなかには難しいものやつらいものもある。しかし、それらを乗り越えて人のお役に立つことで、自身の存在意義、社会や会社での役割を見出すことができるのではないだろうか。そして、厳しい仕事のなかにあって、いかに喜びを見出すかということこそが、後の成長につながっていくのだと私は思う。社員一人ひとりの成長こそが、会社の成長でもある。時代の流れは刻々と変化していくものであり、社会から求められることもまた変化していく。現状に満足して今のままでよいと思ったとき、人のお役に立つことから一歩後退することになってしまうのではないだろうか。成長するためには常に前向きな気持ちを持って、チャレンジし続けることが大切だ。私たちは何をしたら社会に、人に貢献できるのか、そして喜んでいただけるのかを、常に追及し続ける企業風土を持った組織でなければならない。
生きていれば、病気や事故で知人や友人、身近な人を失くすという悲しい出来事を、誰しもが少なからず経験することだろう。本人の無念さに想いを馳せ、遺族の哀しみに触れるとき、私たちは改めて命の尊さを感じることとなる。人生は命であり、健康がすべての源泉であると、当たり前のことながらそのときを迎えて切実に思い知らされることになるのだ。私たちは、建物を通じて夢や希望を具現化するお手伝いをすることを生業としている。建築には考え方やつくり方で人を元気に、そして健康にできる力があると信じている。気の休まる空間であったり、心地よい材料を吟味することであったり、建築のプロとして心も身体も健康にする建物を提供していく責任が私たちにはある。そして、そのためには私たちが誰よりも健康である必要があると思っている。健康な身体と健全な思想があってこそ、力強いエネルギーが漲る建物づくりができるのではないだろうか。まずは私たちが誰よりも率先して健康を追及し、その姿をしっかりとお届けすることで、お客様や協力業者にもその意識や効果を伝播していきたい。
最後に、これまで私たちのいう“地域”とは、地元「丹波篠山」のことだった。しかし、これからの吉住工務店は100周年に向けて、「丹波篠山と兵庫」を私たちの“地域”として大きく捉え、広くさまざまな形で地域社会に貢献していきたいと考えている。地域の一番星に。小粒であってもキラリと輝く会社でありたい。向き合うお客様から、「あなたが一番であり、吉住工務店が一番」と言われる会社を目指して。努力を惜しまず、全社員が一丸となって「真実一路」の精神を持って邁進していきたい。